手元のフォントで縦書き表示するときの注意
好きなフォントで縦書きの原稿を確かめたい。でも、フォントをツールに読み込ませて大丈夫なのか、縦書きにしたとき字形が崩れないか、ライセンス上問題ないか——手元のフォントを持ち込むときに確認したいポイントを、実際に検証した挙動とあわせてまとめます。
フォントの持ち込みとは — Yomikumi でできること
Yomikumi の縦書きエディタでは、手元のフォントファイルを読み込んで、縦書きプレビューの書体を切り替えられます。挙動は次のとおりです。
- 読み込み方は2つ: ツールバーの「設定」を開き、「フォント」の「フォントファイルを選ぶ」からファイルを選ぶか、フォントファイルをツールの画面へドラッグ&ドロップします。
- 対応形式は TTF/OTF/WOFF/WOFF2 です。TTC(コレクション形式)には対応していません(後述)。
- 上限: 1ファイル20 MiB(メビバイト)・同時に4個・合計64 MiBまでです。
- 適用先はプレビューと印刷用レイアウトです。入力欄(エディタ)の書体は変わりません。実測(Chromium)では、印刷メディアでもフォント指定が引き継がれ、生成したPDFのフォント資源に読み込んだフォントが含まれることを確認しています。実際の描画や埋め込みの形式はブラウザ・OSに依存するため、出力結果は印刷プレビューや保存したPDFで確認してください。
- この画面を開いている間だけ有効です。読み込んだフォントは保存されず、ページを再読み込みすると既定の書体に戻ります(実測)。使うたびに読み込み直してください。
- フォントファイルは端末内で処理され、サーバーへ送信されません。フォントの選択・適用・解除の間、Yomikumi のサーバーを含むどこへのネットワーク送信も発生しないことを実測で確認しています。
試してみる(手順)
- yomikumi.com/text/ を開きます。登録は不要です。
- 次の例文を貼り付けます(句読点・括弧・長音の向きを確かめるための文です)。
縦書きの、句読点。「括弧」や長音ーの向きも、この文で確かめられます。
- ツールバーの「設定」を押し、「フォント」にある「フォントファイルを選ぶ」からフォントファイルを開きます(「フォントファイル(TTF/OTF/WOFF/WOFF2)をここにドロップしても読み込めます」という案内のとおり、ドラッグ&ドロップでも読み込めます)。
- 読み込みに成功すると「フォント「◯◯」を適用しました。このフォントはこの画面を閉じるまで有効です」と表示され、プレビューの書体が変わります。
- 設定パネルの「縦書きテスト表示」に固定の文字列「永あ亜、。「組」(縦)ー…12年!?」が読み込んだフォントで表示されます。句読点・括弧・長音の位置や向きに違和感がないか、ここで確認します。
縦書きの字形に注意 — 句読点の向きが変わらないフォントがある
横書きと縦書きでは、同じ文字でも置かれ方が変わるものがあります。読点「、」句点「。」は横書きでは文字の左下に付きますが、縦書きでは右上に置かれます。「「」」のような括弧や長音「ー」も、縦書きでは向きが変わります。日本語組版の要件を整理した資料である W3C「日本語組版処理の要件(JLReq)」でも、縦組と横組で字形が変わる文字として整理されています。
デジタルフォントでは、この置き換えをフォント内部の OpenType の「vert」(Vertical Alternates)という仕組みが担っています。フォントが縦書き用の字形を持っていれば、ブラウザが縦書き表示のときに自動で置き換えます。縦書き用の字形を持たないフォントでは、ブラウザが十分に補えず、横書き用の字形のまま縦に並ぶことがあります——読点が右上ではなく左下に見える、といった崩れ方です(CSS Writing Modes Level 3 は縦組でこうした縦書き用機能を使うことを定めつつ、足りない字形をブラウザが補い得ることも示しています)。
今回の実測(Chromium)では、縦書き用字形を持つ書体と持たない書体(検証用に作成した2書体)で同じ文を表示し、読点・句点の位置が「右上」と「左下」に分かれることを確認しました。おおよそ次のような見え方の違いです:
Yomikumi はフォントが縦書き用の字形を持つかどうかを自動判定・自動補正しません。読み込み時にも「このフォントが縦書き用の字形を持たない場合、句読点や括弧の向きが不自然になることがあります。テスト表示と印刷結果で確認してください」という案内を表示します。縦書きテスト表示と、実際の印刷・PDF保存の結果で確認してください。
収録されていない文字は別のフォントで表示される
読み込んだフォントに収録されていない文字は、ブラウザが別のフォントで代替表示します(実測: 一部の文字だけを収録した検証用フォントで、収録外の文字が代替表示されることを確認)。欧文フォントや収録文字数の少ないフォントでは、かなだけ・漢字だけが別の書体になる「混植」が起こり、代替に使われる書体はブラウザ任せで、Yomikumi の既定の書体(明朝系)に戻るとは限りません。プレビュー全体の見た目を揃えたい場合は、日本語の文字ぞろえが十分なフォントを使ってください。
ライセンスの確認ポイント(一般知識)
フォントは、無料で配布されているものも含めて、それぞれの許諾条件(ライセンス)付きで配布されるデータです。フォントを原稿づくりに使う場面では、確認しておきたい点が3つあります。この節はフォント一般の話であり、法的な助言ではありません。個別の判断は、そのフォントの配布元が示す許諾条件を確認してください。
- 画面表示・印刷に使えるか: 多くのフォントが認めている基本的な使い方ですが、商用利用や成果物の種類に条件が付くものもあります。
- PDF への埋め込みが許されているか: ブラウザの「PDFに保存」は、表示に使ったフォントを PDF へ埋め込むことがあります(埋め込みの有無・形式はブラウザの処理に依存し、Yomikumi は保証しません)。作成した PDF を配布するなら、埋め込みを許可しているフォントかを確認してください。
- 改変・再配布の条件: フォントファイルそのものの配布や加工は、表示に使うこととは別の許諾事項です。
自由なライセンスの代表例に SIL Open Font License(OFL)があり、公式サイトは書籍・ポスター・ロゴ・ウェブサイトなどでの利用を認めると説明しています(条件の詳細は同サイトを参照)。一方、市販フォントは製品ごとの使用許諾契約で範囲が定められています。
なお、Yomikumi にフォントを読み込ませる操作は、端末内のブラウザで表示に使うだけです。フォントファイルがサーバーへ送信されることも、Yomikumi 側に保存・再配布されることもありません(前述の実測どおり)。
読み込めない・見た目がおかしいときの確認点
- 「「◯◯」は対応形式ではありません」と出る: TTC(コレクション形式)のファイルなどは読み込めません。エラーの案内どおり「対応形式はTTF/OTF/WOFF/WOFF2です。TTC(コレクション形式)は未対応です」。TTC は複数書体を1ファイルにまとめた形式のため、使いたい書体が単体の TTF/OTF で配布されていないか確認してください。
- 「上限(1ファイル20 MiB・同時4個)に達しています」と出る: 1ファイルの上限は20 MiBです。漢字を多く収録した日本語フォントではこれを超えるファイルもあります。また、同時に読み込めるのは4個までなので、「使っていないフォントを解除してから読み込んでください」の案内どおり、一覧の「解除」で減らしてから読み込み直してください。
- 再読み込みしたら既定の書体に戻った: 仕様です。フォントは保存されないため、読み込み直してください。
- 句読点や括弧の向きがおかしい: 上の「縦書きの字形に注意」のとおり、フォントが縦書き用の字形を持っていない可能性があります。
- 一部の文字だけ書体が違う: そのフォントに収録されていない文字が代替表示されています。
対応範囲の制限
- 読み込めるのはフォントファイル(TTF/OTF/WOFF/WOFF2)だけです。TTC(コレクション形式)は読み込めません。パソコンにインストール済みのフォントを一覧から選ぶ機能はありません。
- 縦書き用字形の有無の自動判定・自動補正はしません(テスト表示で目視確認する設計です)。
- 読み込んだフォントの保存・書体名の解析・字形の加工はしません。
- 印刷/PDF保存で生成される PDF へのフォント埋め込みの有無・形式は保証しません(ブラウザの処理に依存します)。
原稿の保存と送信について
Yomikumi のアプリケーションコードとサーバーは、入力した本文もフォントファイルも送信しません。処理はブラウザ内で行われます。作業内容(本文)はクラッシュ復元のため端末内に一時保存されますが、フォントは一時保存の対象外で、保存されるのは本文と設定のみです。大切な原稿はツールの「ファイルに保存」で保存してください。
縦書きエディタ(無料・登録不要) 手元のフォント(TTF/OTF/WOFF/WOFF2)を読み込んで縦書きプレビュー・印刷/PDF保存。縦書きテスト表示で字形を確認できます。Yomikumiは入力内容もフォントもサーバーへ送信せず、ブラウザ内で処理します。